2014年の競馬を占う
新年あけましておめでとうございます。本年もまた、暴言と極論にお付き合いいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
さて、今年は干支がウマというだけでなく、JRA60周年という節目の年でもあり、記念事業もいろいろと控えている。いっぽう、札幌競馬場のリニューアルオープン、中山競馬場の整備工事にともなう代替開催、ジャパンカップダートの競走名変更&中京への移設、朝日杯フューチュリティSの阪神への移設と、夏以降はイレギュラー性またはリスタート性の高い番組となっていることもポイントだ。
いわば“特別な年”。できればサークル内も周辺関係者もファンも一体となり、つまりは競馬界をあげて「メモリアルイヤーにふさわしい競馬」を作り上げたいものだ。
とはいえ、本当に“記憶に残る競馬”が繰り広げられるかどうかは馬次第、というのが事実。選手権距離ではオルフェーヴル、短距離路線ではロードカナロアという“大駒”を欠くことになる今年、果たしてどれだけの盛り上がりが実現できるのか、残された馬たちが背負うものはかなり大きいといえる。
普通に考えれば、古馬中長距離戦線ではジェンティルドンナ、ゴールドシップ、キズナ、エピファネイア、ウインバリアシオン、メイショウマンボあたりが中心となるのだろう。
マイル路線は相変わらず低レベルで、トーセンラーをはじめ「2000m以上では強いのがいてちょっと足りない。ならばマイルで」という組が大きな顔をしそうな予感。ジャスタウェイやロゴタイプなどが加わってくる可能性もある。ダート路線はベルシャザールとホッコータルマエにワンダーアキュートが絡む構図か。
3歳戦線は、牝馬にはハープスター、レッドリヴェール、ホウライアキコ、マーブルカテドラル、ベルカントと素質馬が揃い、マイルにもアジアエクスプレスやショウナンアチーヴ、ミッキーアイルがいて、そこに牝馬勢も加わってくると考えれば層は厚そうだ。問題は牡馬クラシック路線で、一応はイスラボニータやワンアンドオンリー、トーセンスターダム、バンドワゴンなどはいるものの、まだ序列は固まっていないイメージ。現時点では1勝の馬、さらには未勝利馬や未デビュー馬が台頭してくることも十分あるだろう。
と、まぁここまでは当たり前の分析というか展望。ここからは少しヒネって今年の競馬を占ってみたい。
まず、オルフェーヴルやロードカナロアといった殿堂入りクラスの強豪が、複数年に渡って覇権を握り、落ちぶれる前に引退した、というケースを過去から探してみる。
たやすく思い浮かぶのはディープインパクトで、少しスケールは落ちるもののシンボリクリスエスやビワハヤヒデ、その前となるとシンボリルドルフ、トウショウボーイ、シンザンということになるか。短距離馬では、連続してJRA賞を受賞しているのがダイワメジャー、デュランダル、タイキシャトル、バンブーメモリ―、ニッポーテイオー、そしてニホンピロウイナーといった面々。ただしデュランダルは現役最終年の2005年は2走だけに終わっているし、バンブーメモリ―も最晩年はパっとしなかったので参考外か。
では、これらの各馬が引退した翌年の競馬、すなわち“大駒が不在となった古馬戦線”はどうなったか。
ディープインパクト引退後の2007年は、前年の二冠馬メイショウサムソン、クラシックでは振るわなかったがしっかり立て直してきたアドマイヤムーンといった4歳勢が活躍。シンボリクリスエス後の2004年は、3歳〜4歳春まで惜敗続きだったゼンノロブロイが秋の古馬三冠を達成した。ビワハヤヒデ後の1995年は確固たる軸のいない年となったが、これは前年の三冠馬ナリタブライアンがすっかりスランプに陥ってしまったせいだろう。
シンボリルドルフは国内最後のレースが1985年の有馬記念だったから、その翌年の1986年を見ると、ここも混戦模様。1985年の二冠馬ミホシンザンが3着続きと低迷したことが大きい。トウショウボーイ後の1978年も、ラッキールーラやハードバージら前年のクラシック組が不在で、シンザン後の1966年は4歳のコレヒデが天皇賞(秋)と有馬記念を勝っている。
短距離に目を移す。ダイワメジャー後の2008年は、急上昇のファイングレインとスリープレスナイト、別路線組といえるウオッカやブルーメンブラットがGIを勝利。タイキシャトル後の1999年は、4歳で本格化したエアジハードがマイル二冠のほか、スプリント戦線の安定勢力だったマサラッキとブラックホークがGIを制した。
ニッポーテイオー後の1988年秋〜1989年は、サッカーボーイ、バンブーメモリー、オグリキャップという“最強世代”が席捲。ニホンピロウイナー後の1986年はギャロップダイナとタカラスチールがGI勝ち馬となっている。
つまりイメージとしては「古馬中長距離路線では、前年のクラシックで中心を務めた馬たちが無事なら、順当に活躍。“去った王者”に苦戦していた馬より、フレッシュな4歳勢を狙いたい。ただしこれらの馬が故障やスランプに見舞われれば途端に大混戦」といった様相だ。短距離路線は「急上昇&遅れて本格化の馬、別路線組が主力となるが、地道に好走していた馬がGIをつかむ可能性もなくはない」といったところだ。
続いて、JRAにとって節目の年(10年ごと)について調べてみよう。
1964年はシンザンが三冠を達成(牝馬もカネケヤキが二冠)。1974年はキタノカチドキが皐月賞と菊花賞の二冠。1984年はシンボリルドルフが三冠。1994年はナリタブライアンが三冠。2004年はキングカメハメハが変則二冠(ゼンノロブロイが秋の古馬三冠)。
おいおいっ、といいたくなるくらい見事に二冠馬または三冠馬が誕生している。この流れが60周年の今年も続くなら、日本ダービーは皐月賞かNHKマイルCの勝ち馬、菊花賞は春のGI勝ち馬を素直に買っていれば難なく当たるということになる。
今年はソチでの冬季五輪とサッカーのW杯ブラジル大会も控えている。
2010年はバンクーバーで冬季五輪、南アフリカでサッカーW杯があったわけだが、競馬ではアパパネが牝馬三冠を達成した。2006年はトリノで冬季五輪、ドイツでW杯が開催され、メイショウサムソンが二冠、カワカミプリンセスも二冠、古馬では前年の三冠馬ディープインパクトがGIを4勝した。
冬季五輪&W杯イヤーもまた、二冠馬・三冠馬の特異年となっているようだ。
ちなみにウマ年の競馬にはそれほど目立った現象は見当たらないものの、今年と同じ甲午(きのえうま)、つまり60年前、すなわちJRA生誕年には、ダイナナホウシユウが皐月賞と菊花賞の二冠を成し遂げている。
そんなわけで結論としては「古馬勢の戦いは、ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、ウインバリアシオンより、4歳のキズナとエピファネイアが上位。前年の二冠馬・三冠馬が順当に活躍していることを考えると、ひょっとするとメイショウマンボが勝ちまくるパターンもありうる」ということになり、「短距離路線はGIへ向けて上昇してきた馬と別路線組が優位」で、3歳クラシックは「二冠馬か三冠馬が誕生する」というのが2014年の競馬。このことを念頭に置いて馬券勝負に臨みたい。