外出先で競馬中継が見たい!(2)
先々週が「トリプル馬単」の話、先週は春分の日でお休みで、いきなり今週が「(2)」って、いったい「(1)」はどこにあるのだという話だが、実は2005年の12月2日(第26回)にあったりする。それ以前は「準備中」になっているが、
このコラムの第1回は2005年の6月3日。それから9年近くが経過し、回を重ねること431回。今回が最終回ということになった。
ここで当方のハードディスクの中にある第1回のコラムを読み返してみると(よくぞ破損などせず残っているものだ)、「ここにきて以前ほど『VAIO』の優位性がなくなってきた、とも言われているが」とかなんとか。そのころから、Windows機を作っているかぎりは、どうにも特長を出しづらく似たような製品ばかりになってしまい、そうこうしているうちにiPhone、iPadでAppleに一気にやられ、今年に入ってソニーのパソコン事業からの撤退が発表されて今に至る、というところである。
実はこのコラムが始まる前にも、こちらでは「パソコン競馬」関係のニュースを担当させていただいており、それがはじまったのが1999年だった。その前年、1998年の8月にiMacが発売されており、それまで「一部の熱烈なファン」と「デザイン関係の仕事をしている人」に支えられているという印象も強かったAppleが、この分野でシェアを拡大していく期間と、こちらのニュースやコラムの執筆期間がちょうど重なっていた、とも言えるかもしれない。
さて、その1999年1月に書いたニュースを見ると、一番の大ニュースはNTTドコモによる「iモード」サービスの発表だろう(開始は2月)。それまで、外出先での競馬といえば、本来の意味での「電話投票」だったり、パソコンなら「灰色の公衆電話」とノートパソコンを電話線で繋いだり。携帯電話をモデム替わりに使うことも可能だったが、それもパソコン側に専用のカードを挿して携帯電話と繋ぐなど、けっこう面倒な(しかも通信費が高い)話だった。
また、1月のJRA-VAN関係では、NTTの「カルレ」を使ったデータ提供が開始された、というニュースもあった。また懐かしい名前が出てきたもので、今や競馬ソフト上から落とすのが当たり前のJRA-VANデータだが、当時はダイヤルQ2(またはビデオテックス)のパソコン通信でデータをダウンロードする形態だった。それが「インターネットエクスプローラーや、ネットスケープナビゲーターなど、普段からインターネットの閲覧に使っているブラウザからデータをダウンロード出来る」というニュースである(ついでに電話代などが安くなる)。
と、ここまで書いたところで、ほかにどんなニュースがあったのかと、つい99年の記事をしばし読みふけってしまった。いやあ、ISDNのTAがどうしたの、木曜発表の出走馬がJRAホームページに掲載されるようになったのだの、NARのサイトでオッズと払戻金の情報提供がはじまっただの。今となっては当たり前になった話から、過去のものになった話まであれやこれやと出てくること、出てくること。ちなみに「モバイルゲット」でケータイ端末から馬券が買えるようになったのは翌00年。そして、一般的なケータイでインターネット投票(IPAT)のサービス提供が開始されたのが2002年、iモード開始から3年少々経過してからであった。
そんな時代もありつつ、今やスマホやタブレットで便利に馬券が購入できるようになった。「Windowsじゃないと困るのだ!」という人にとってはちょっと時間を要したものの、一昨年末あたりから10〜12インチ、そして昨年末あたりからは8インチタブレットが数多く登場。操作性や画面のサイズなどで苦労する面もあるとはいえ、外出先、それも机などがない状況でも、かなり自宅に近い状況が構築できるようになっている。
そもそも、この99年当時はモバイル以前に「自宅のWINS化」がようやく一般的になってきたころだっただろうか。パソコンやファミコン等のPAT投票が登場したのが91年。グリーンチャンネルが電話投票会員向けに放送を開始したのが95年だった。そこから、今度は「全国どこでもWINS化」。投票に関しては古くから電話投票があり、ケータイ電話さえあれば可能だったのだが、WINSになくてはならないのは「リアルタイムの」レース映像である(と、ようやく表題の話にたどり着いた)。
これは最近では、JRAレーシングビュアーで少々の遅延を我慢すれば見ることはできたのだが、キャリアを問わずグリーンチャンネルを通信を介して視聴できるようになったのは、グリーンチャンネルウェブのサービスが開始された今月のことである(厳密にはリアルタイムではないが、それは衛星経由の時間やら、信号の復号で遅延の発生する自宅でも同じ)。いやあ、地方競馬や他の公営競技が、かなり以前から(無料で)行っていることを考えれば、有料だろうとなんだろうと、もっと早くできなかったものなのか、と思うところだが、ともあれ、レース映像だけではなく、本馬場入場なども含めて、これで「全国どこでもWINS化」が完了したといってもいいだろう。
もっとも、少し前ならソニーのロケーションフリー、最近ならslingboxを使えば、「自宅で受信したグリーンチャンネルの再配信」は可能ではあった。ただ、ロケーションフリーへの入力はS端子までのアナログ信号。slingboxも、出力するチューナー側は「D端子」といかにも「デジタル」っぽい名前がついているが、これも実はアナログ信号。受信するのはデジタル放送でも、再配信する信号は、アナログ信号をネットに送る際に再デジタル化したもの。まあ、仕組みや再配信のルール作りがどうこう、という話はさておき、「裏技」とまでは言わないまでも、ちょっと面倒な手法が必要だったのである。
これが最近になって、デジタル信号のままで、外出先に再配信することが正式に可能になったというニュースがあった。一部の放送はリモート視聴の対象となっていないそうなのだが、ここにグリーンチャンネルの名前はないため、どうやらこの方法でも問題なく「全国どこでもWINS化」が可能なようである。そして視聴方法だが、これは早速ソニーがBDレコーダーとスマホの組み合わせで対応してきている。なぜソニーはロケーションフリーをやめてしまったのだ、と思っていたのだが、デジタル化が進んだことで、その決まり上仕方なくやめたのか、どうなのか。ともあれ、この手のものには飛びついてやってくれる印象通り、昨年秋以降に発売されたBDレコーダーと、スマホの組み合わせで外出先からでもグリーンチャンネルなどが見られるようになるそうだ。わざわざ「ロケーションフリー」や「Slingbox」などの機器を買う必要があるのと、BDレコーダーで対応できるのとでは大きな違い。値段はさておくとして、外出先からのリモート視聴に際してのハードルはかなり低くなったと言っていい。今後、恐らく他のメーカーからも同様の機能を備えた機器が発表されたり、システムのアップデートなどで対応できるようになってくるに違いない。
そういう意味では、増税前に駆け込みでBDレコーダーを買おうと思っている方は要注意。 さまざまな分野でネット配信が進んでいるとはいえ、「それしか見られない」のと、自宅の機器からの配信と両方が利用できるのとでは、利便性やらなにやら大違いだ。もともとソニーのレコーダーを買うつもりなら、「BDZ-ET2100/ET1100/EW1100/EW510」のいずれかを買えば良し。他のメーカーのレコーダーが欲しいなら、もう少し待って対応状況を見極めてからのほうが良いだろう。仮にちょっと高価な10万円のレコーダーを買うにしても、増税分の3%は3000円だ。自宅でグリーンチャンネルに加入している方が、これに加えて外出時用に「グリーンチャンネルウェブ」スマホ会員で月500円払うなら、増税後にレコーダーを買ったとしても視聴料半年分で回収できることになる。グリーンチャンネル以外のことを含めても、これからレコーダーを買おうという方なら、リモート視聴対応機かどうかは忘れずにチェックして比較検討を行いたいところだ。
さて、このコラムもこれにて終了、である。最後は、これまでの振り返りをしようかとも考えたのだが、300回などで振り返ったこともあったので、今回は原点に立ち戻り(?)、このコラムが始まる前に担当していた「ニュース」の拡大版的な形で締めさせてもらうことにした。まあ、ニュースというには寄り道が多く、コラムの第1回で宣言した通り、最後まで「肩の力を抜いてぐだぐだと書きますよ」といった形である。そんなぐだぐだに、長いことおつきあいいただきまして、みなさんありがとうございました。