市丸博司のPC競馬ニュース ASADA
 第424回 2014.1.31

「買ってはいけない」馬を買うべき流れ?

 29日の川崎記念では、単勝1.1倍のホッコータルマエが優勝。ここからフェブラリーSを経てドバイを目指すそうだが、まずは好スタートを切ったと言えるだろう。そして、そんな「単勝1.1倍」を冷やっとさせたのが、2分の1馬身差で2着に入ったムスカテールだった。前で待ち構えていたタルマエも、いったんは交わされるかというところから踏ん張ったあたり、着差だけでははかれない差もあるように思えたが、なんにしても久々のダートだったムスカテールも「健闘」と言っていいだろう。
 
 このムスカテールは、10年末から11年4月に新馬、500万を2連勝して以来のダート戦。初ダートよりはマシとはいえ、常識的には「買ってはいけない」タイプの馬だった。もちろん1.1倍のホッコータルマエを連単系馬券のアタマで買うのもどうか、という面もあるものの、ムスカテールも穴ならまだしも3番人気ではどうなんだ、と考えた方も多かろう。

 ただ、どうも最近、この手の「買ってはいけない」ように思える馬が走るケースが目立ってはいないだろうか。たとえば今週、根岸Sに出走するドリームバレンチノのJBCスプリントもそんなパターン。走る可能性は考えられるにしても、いきなりJpn1で初ダートというのはどうなんだ、という馬だった。同じく根岸Sに出走するエーシントップもこれまた同様で、オープン特別とはいえ前々走の霜月Sが初ダート。しかもこちらは差のない2番人気と配当妙味も薄く、ダートのほうが走るとまで言わなくても、ダートでも芝並みには走るという確信がなければ手を出しづらい。そして芝ダート替わりで強烈だったのは、1月11日、大和Sに出走して3着に入ったオセアニアボス。昨年10月には2着があったとはいえ、その後4戦連続で2桁着順に敗れていた9歳馬の初ダートである。この馬は単勝15番人気、133.4倍。ここまでの穴馬になると、むしろ「気になるなら買っておけ」。しかし芝ダート替わりとは関係ない視点で「常識的には買いづらい」馬だった。

 また、コース替わりの逆パターン。ダートから芝に替わっても力を出したのが、みなさんご存じ、昨年の最優秀2歳牡馬・アジアエクスプレスだ。新馬、特別とダート戦で2連勝を飾り、ダートのJpn1・全日本2歳優駿でも最有力候補になるかと思ったら、なんと補欠。そこで芝の朝日杯FSに目標を切り替えると、レースレベル云々という話もあるとはいえ、グレード制導入後では初めてという、堂々の初芝でのG1制覇である。
 さらに。距離短縮は「買い」と判断する人もいるようだが、大きな条件替わりという意味では、マイルCSを制したトーセンラーもそんな1頭に挙げられる。デビュー以来1800m以上を使い続け、11年の菊花賞は3着、そして昨年春の天皇賞では2着。そこから昨秋、京都大賞典で2着に敗れると、マイルCSで初めてのマイル以下に出走し、あの見事な差し切り勝ちである。

 ほかにも見落としている例があるような気もするが、ざっと挙げただけでもオープン・重賞でこれくらいはすぐに頭に浮かぶ、大きな条件替わりの好走馬。他の期間と比較したわけではないが、4カ月やそこらでこれだけ、というのは「多い」といっていいだろう。もともと、「ちょっといい馬が見当たらないんだよね」といったレースでは人気になりがちのタイプ。この手の馬は「買ってはいけない」と考える人も多くなってきていたものの、実際に短期間にこれだけ走る例を見せられると、元に戻ってやっぱり買われやすくなってくるのだろうか。そうなると、またオッズとの比較で買うべきかどうかという判断が難しくなってくる。ただ、こういった「流れ」を気にする人(→筆者がそうだ)であれば、今後へ向けてちょっと頭に入れておいたほうが良いかもしれない。
 と、今後のことはさておき、今週の根岸S。先に触れたドリームバレンチノが出走する。ダート路線を歩み続けた馬には「地方の交流重賞は走っても、中央のコースでは結果が出ない」という馬も少なからずいるものだ。今のところ、ドリームバレンチノはそういうタイプになる可能性もあり、なんのことなく中央のコースでも力を出す可能性もあり。走らないかも、という疑いを持って見るなら、人気面ではあまり買いたくないオッズになりそうなのだが、さて、どうしたものだろう。今回のタイトル通りなら「自分で買え」という馬ではある。

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Gおやせら