第3回 2004.5.24


   

パソコンを区別する方法って?

 さて、前回の最後で宿題として、個々のパソコンに割り当てられているIPアドレスを調べて、それぞれのパソコンに付けるわかりやすい名前を考えておいてくださいとお願いしました。

 ここでは仮に、IPアドレスが

パソコンA:192.168.1.3
パソコンB:192.168.1.4
パソコンC:192.168.1.5

となっており、それぞれのパソコンに上から「Father」「Mother」「Boy」と名付けるとしましょう。

 ただ、個々のパソコンのIPアドレスを調べているとき、「調べるたびに値が違うことがある」という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 何か問題が起こっているのでは?と早合点してしまう場合もあるかもしれませんね。でも、これは心配ありません。 実はこれは、「IPアドレスを自動で割り当て」てくれる機能を使っているからなのです。この機能のことを、ネットワーク用語で「DHCPサーバ機能」といいます。実際にそれぞれのパソコンに設定する前に、この機能について理解しておきましょう。

DHCPサーバ機能って?

 DHCPサーバ機能は、ほとんどのブロードバンドルータに搭載されており、普通に電源を入れると有効になっています。つまり、設定を変更しない限りDHCPサーバ機能が自動的に稼働しているのです。ですから、ユーザーであるあなたが今まで特に意識しなくても、この機能を使っていたのです。前回、インターネットにつなぐときの手順を思い出した際、「IPアドレスを自動的に取得する」にチェックを入れたことを確認したと思います。あのチェックが、実はこのDHCPサーバ機能を使うことだったのです。

 具体的に、このDHCPサーバ機能は何をしているのかといいますと、

・割り当て可能なIPアドレスをいくつか保管しておく
・パソコンからIPアドレスの割り当て要求が来たら、保管してあるIPアドレスから適宜割り当てる
・このとき、すでに他のパソコンに割り当て済みのIPアドレスは除外する

 という作業をしています。

 つまり、パソコンがDHCPサーバに対して「IPアドレスを割り当ててください」とリクエストすれば、重複しないIPアドレスを自動的に設定してくれるのです。

 IPアドレスは、ネットワークを構成するパソコンすべてに割り当てられており、個々のパソコンを区別するための情報として利用されています。ですから、重複するのはもってのほかです。このような面倒なIPアドレスの管理を代行してくれているのがDHCPサーバ機能なのです。

 ではなぜ、このような便利な機能があるのに、今回の作業のように手入力でIPアドレスを設定しなければならないのでしょうか。

 一番の理由は、DHCPサーバ機能によるIPアドレスの割り当てが、基本的に「早い者勝ち」だからです。

 たとえば、DHCPサーバ機能が管理しているIPアドレスの範囲が「192.168.1.3〜192.168.1.10」の8個だったとします。 このとき、Father→Mother→Boyの順番でパソコンを起動したとすると、それぞれに割り当てられるIPアドレスは

Father:192.168.1.3
Mother:192.168.1.4
Boy:192.168.1.5

となります。しかし、この順番がBoy→Father→Motherの順番になりますと、

Father:192.168.1.4
Mother:192.168.1.5
Boy:192.168.1.3

と、先ほどとまったく違う値が設定されてしまう可能性があります。先ほどの図と比べると、その違いがよくおわかりいただけると思います。

 冒頭で書いた「IPアドレスを調べるたびに値が違う」という現象が発生したのはこのせいなのですが、パソコンを区別するための情報がコロコロ変わっては、何かと面倒です。特に、トラブルが発生したときに、IPアドレスが(固定されていなくて)わからないと、いちいちパソコンを調べないといけません。これはかなりの手間です。そこで、IPアドレスを手入力して固定してしまい、使うたびに変わるという問題を回避するのです。 (※本来のDHCPサーバ機能には、特定のパソコンに対して特定のIPアドレスを割り当てる機能がありますが、ブロードバンドルータが内蔵しているDHCPサーバ機能ではそこまでサポートしていない方が多いので、今回は割愛します)

 では、具体的な手順を見ていきましょう。ここではWindows XPの画面で紹介しますが、他のバージョンのWindowsでもそれほど画面デザインは変わっていませんので、ご安心ください。

 まずは、[スタート]→[コントロールパネル]→[ネットワーク接続]と辿り、[ローカルエリア接続]のプロパティを開きます。

 次に、[全般]タブの中から[インターネットプロトコル(TCP/IP)]のプロパティを開きます。

 ここで、[次のIPアドレスを使う]にチェックを入れ直し、前回調べておいた値を入力します。「サブネットマスク」や「デフォルトゲートウェイ」も、同様に画面に表示されていた値をそのまま入力してください。IPアドレスの設定を手入力するようになると、画面下部の「DNSサーバー」の欄も自動取得のメニューがグレーアウトしてしまいます。よってここには、「デフォルトゲートウェイ」に設定したものと同じ値を設定してください。

 以上でIPアドレスに関する設定は完了です。続いて、パソコンに名前を付けましょう。

 こちらは、[マイコンピュータ]で右クリックして[システムのプロパティ]を表示し、コンピュータ名のタブを選択します。ここでコンピュータ名の[変更]ボタンを押し、「Father」と入力します。ワークグループ名は適当で構いませんが、「MYHOME」などがよいでしょう。[コンピュータの説明]欄は、機種名や主に使う場所などを入力しておくと便利です。

 これらの作業を、パソコンの台数分だけ繰り返してください。IPアドレスやサブネットマスクなどの数字のタイプミスはしないように、気を付けてくださいね。

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 今回で、ネットワークの基礎となる部分ができました。次回は、それぞれのパソコン間でデータのやり取りをしてみたいと思います。では、またお会いしましょう。

Text by Azami Aoba

Illustration by Ryoco Ishiyama


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